• 文楽に狐のぬいぐるみ

『恋娘昔八丈』、「吉田清之助改め 五世豊松清十郎襲名披露 口上」に引き続き、襲名披露狂言となる『本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)』。

見に行った第1部の最後の演目であり、少し前に読んだ、三浦 しをん の『仏果を得ず』『あやつられ文楽鑑賞』にも出てくる演目であるので、ちょっと気合を入れて、図書館で借りた本で台本を読んでいく。

足利将軍 源 義晴、相模の太守 北条氏時、甲斐の太守 武田晴信(信玄)、その息子の武田四郎勝頼、そして、長尾(上杉)謙信、長尾景勝(叔父謙信の養子)、斉藤道三、山本勘助・・・と歴史上著名な人物が次々と登場する荒唐無稽なお話。

借りた本は『双蝶々曲輪日記 本朝廿四孝』(白水社)で、「歌舞伎オン・ステージ」というシリーズの一冊。

文楽の床本とは違って、それぞれの役者さんがセリフを話す形の台本。

なので、読み出すなり、頭の中の晴信は、大河ドラマでこの役を演じていた歌舞伎役者だ。しかし、謙信はそのドラマの役者さんとはイメージがあまりにも・・・とか、頭の中がぐるぐる。しかも、この話、「○○ 実は斉藤道三」だの、「○○ 実は武田四郎勝頼」だの、「そんなわけないだろ」という人物設定が何度もなされている。

まあ、それはともかく、最後まで台本を読み流して、今回の文楽で上演される段を確認すると、「十種香の段」、「奥庭狐火の段」という最後に近いごくごく一部だけ。

ここでのヒロインは、謙信の娘・八重垣姫。

「十種香の段」

上杉家は、武田の家宝・諏訪法性の兜を借りたまま返さない。切腹したことになっている武田の嫡男・勝頼は花作りの蓑作と名乗り、腰元の濡衣(この人の人物設定がまたややこしい)とともに上杉の館に潜入。謙信の娘・八重垣姫は許婚の絵姿そっくりの蓑作を見て勝頼と気づき、御殿の中ですがりつく。ニセ蓑作の正体を見抜いた謙信は、蓑作に塩尻峠への使いを命じ、刺客に後を追わせる。

「奥庭狐火の段」

勝頼に危急を知らせるにはどうすればいいかと、気も狂わんばかりの八重垣姫。思いあぐねて、神殿に祀られている諏訪法性の兜を手にすると、狐の霊力が乗り移る。氷が張りつめ船が通ることのできない諏訪湖を迂回して、陸路で後を追う刺客の先をこそうと、姫は湖の氷の上を一気に走っていく。

今回は、人形遣いの五世豊松清十郎さんの襲名披露狂言なので、人形遣いの方々が、普段とは違い裃(かみしも)姿。終盤の八重垣姫の遣い手も、いつもなら顔をさらされているのはガシラを扱う人だけで、あとの二人は黒子姿であるのに、今回は三人ともが裃姿。ラストの狐のぬいぐるみ4体の遣い手の方々も裃姿で、姫とともに狂い回る激しい動きでは、「おおっ、これぞまさしく文楽の名場面!!」と、文楽鑑賞2回目のやつが偉そうに思ってしまうほど。姫が4体の狐に囲まれた形で、動きがピタッと止まった時は、手が痛くなるほど拍手!

見終わった直後は、この感動の記念に、「狐のぬいぐるみが欲しい!」と思ったのだけど(>ここまで感動しても、人形を欲しいとは思わないやつ)、冷静になって思い返してみると、家で見ても「可愛い」ぬいぐるみではないと思う。ただ、この狐は一人で遣われていたので、どういう構造になっているのかは間近で見てみたかったと思う。


ときどき日記


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Last-modified: 2008-11-16 (日) 17:33:08 (4399d)