『靱猿』の次は、『恋娘昔八丈(こいむすめむかしはちじょう)』。 隣で一人で見に来られていた男性が、かなり熟睡モードに入られていた演目。 慕情と陰謀 商家をめぐる騒動の渦 お家騒動に揺れる萩原家で、密通のため家老・尾花六郎右衛門の息子・才三郎(さいざぶろう)は勘当され、 恋仲であり奉公していた腰元のお駒は実家城木屋へ戻されます。 城木屋では店の窮状からお駒の婚礼話が進み、お駒と才三郎は困惑します。 お駒に惚れている番頭の丈八(じょうはち)や、城木屋の婿の座を狙う成金・喜蔵(きぞう)といった 悪人たちの企みも絡み、事態は混沌とします。 家のため見知らぬ男と祝言を挙げねばならないお駒の切ない心情、好色な丈八のおかしみなど、 商家は大騒動を繰り広げます。 下世話な話なので、わかりやすいといえばわかりやすいんだけど、「私もこれが1回目の文楽鑑賞なら、うとうとしていたかも」と思ってしまった。 でも、今回は『あやつられ文楽鑑賞』で、ほんの少し文楽のことを勉強したので、大夫、三味線、人形、舞台セットと、ちょろちょろといろんなところに目をやってみる。『靱猿』は、お猿さんに目が釘付けだったので、この演目では、「文楽は、大夫を中心に動いているのね」ということを確認してみることに。この演目では、3人の大夫さんが登場するのだけど、それぞれの声と語り口によってかなり趣が異なる。 そして、ストーリーはというと、「城木屋の段」で、城木屋の中でああだこうだと取り込んでいたはずなのに、次の「鈴ヶ森の段」では、いきなり処刑場だ。しかも、処刑されようとしているのはお駒。 「どこでどうなったのさ?」としっくりこないまま話が進み、ラストは無事めでたく・・・。 こういううだうだの内容は好きではないので、ストーリーを楽しむというよりは、登場人物の心情が、浄瑠璃でどのように語られ、人形がどう演じているのかと、ちょっと冷めた目線で鑑賞させてもらう。 |