-宮本 輝 『花の回廊―流転の海 第五部』

[[流転の海 第四部『天の夜曲』>ときどき日記/2008-01-22]]に続く作品。

この巻は苦難の時代。

前巻では、大阪で関西中古車業連合会の設立に奔走する松坂熊吾と富山に住む妻の房江と小学生の息子の伸仁が別々に暮らしていたが、寂しさのせいかひどい喘息に襲われるようになった房江を大阪に呼び戻す。

昭和32年。財産を失った熊吾は、房江とともに、以前に住んでおり、持ち主が判然としないままになっていた大阪・船津橋のビルに住みはじめる。家賃はタダ。但し、電気も水道も止められた不便な生活。熊吾は来る自動車社会を見据えた巨大モータープールの設立に奔走し、妻の房江は小料理屋の下働きで一家を支える。

そして、息子の伸仁は、妹のタネの住む尼崎の「貧乏の巣窟」のような「蘭月ビル」で暮らすことに。

今回は、この「蘭月ビル」の住人がいきいきと描かれている。伸仁から話を聞く熊吾と房江が覚えきれないほど雑多な住人がいるのに、それぞれが個性的というか、どうしようもない事情を抱えている人たちで、読んでいるとタネの切り盛りするお好み焼屋さんでの場面が眼に浮かびそうだ。

第六部のキーパーソンは、「掃き溜めに鶴」のような美少女、津久田咲子か・・・。

この作品の作者のあとがきは、平成19年7月7日の日付。さて、次の作品はいつごろ出るのか?

宮本 輝 公式サイト http://www.terumiyamoto.com/

《2008.2.24読了》

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