-神山裕右著『カタコンベ』

第50回江戸川乱歩賞受賞作。書店でタイトルのカタコンベ(地下墓地)を見て、学生時代イタリアで訪れたカタコンベの強烈な印象を思い出し、手に取ってみた。帯に、逢坂剛さんの「パワーと熱気に満ち、洞窟内でのパニックシーンは迫力にあふれる。」という書評が載っていて、読んでみたくなったのだ。・・・といいつつ、その場で買わずに図書館で予約していたら、忘れかけた頃に連絡があったのさ。

電車の中で読み始めたら、つい読みやすい乱歩賞選考委員の選評から読んでしまった。受賞作になったこの作品も含めて、なかなか厳しいご指摘が多い。帯に載っていた選評の抜粋だけ見ていると、「ものすごく高い評価だったみたいなのに」とおかしかった。

「リミットは水没するまでの5時間~
洞窟に閉じ込められた調査隊が危ない!「贖罪」の思いを胸に、単身、救助に向かった青年を襲う「殺人者」の恐怖。」

プロローグからはじまり、最初のうちは新しい人物が次々出てきて、それぞれの人物像をよく把握できないまま話が進んでいく。中盤、調査隊が落盤事故で洞窟内に取り残されたあたりは、「ワクワク感」があって一気に読めた。ただ、ラストが・・・。過去のいくつかの事件と絡ませて話が進んでゆき、「多分、この人がこの事件の犯人だな」とか、途中から先が読める。謎解きの部分にもしっくりしない点が多いし、登場人物の会話にしても、「ついさっき言ったことと矛盾してないか?」という点がいくつかあって、読後感がすっきりしない。でも、馴染みのないケイビングが取り上げられているのはおもしろかったな。

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