-島田荘司 『透明人間の納屋』

かつて子どもだったあなたと少年少女のために刊行された“ミステリーランド”の第一段を飾る作品。子どもにも読みやすいようにとの配慮から、文字は大きめで、総ルビ。9歳の少年の視点で書かれた文章からはじまり、とっつきやすい。

一気に読んでしまった。主人公は昭和52年に9歳だった「ヨウちゃん」という少年で、隣の印刷所に住む真鍋さんとの関係を中心に話が展開していく。少年の思いが丁寧に綴られていて、母子家庭に育ち、友人もいない「ヨウちゃん」にとって、真鍋さんがどんなに大切な人だったかという思いが切々と伝わってくる。ミステリーとしては、ホテルの密室から女性が失踪した事件の謎が、後日、思いがけない形で明かされるのだが、謎解きだけで読むとやや物足りない。結末も、途中、真鍋さんと「ヨウちゃん」との会話から、「ひょっとしたら・・・」と予感したところにたどり着き、切ない思いがするとともに、「こんなことを書いてもいいのか」という気もするのだ。

「透明人間の薬っていうのはね、ある種のウイルスがもとになっているんだ。ヨウちゃん、インフルエンザは知っているね?」~
「うん知ってる。」~
「インフルエンザのウイルスは、宇宙から来るんだよ。」~
「えっ?そうなの?」

この話で重要な役割を果たす「透明人間の薬」について、真鍋さんが「ヨウちゃん」に説明する場面なんだけど、私は、「えっ、インフルエンザのウイルスは宇宙から来るの!?」と信じそうになった&y-sweat;。うちの[[Luke>Lukeの部屋]]にその話をすると、『アンドロメダ・・・』という映画にも宇宙から来た病原体が出てくることを教えてもらった。調べてみると、原作は、マイクル・クライトンの『アンドロメダ病原体』だ。今度読んでみよう。


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