性の尊厳を巡る書き下ろし医学サスペンス 「ひとは男女である前に人間だ」。 インターセックス(男女どちらでもない性器官をもっていること)の人々の魂の叫び。 高度医療の聖地のような病院を舞台に、医療の錯誤と人間の尊厳を問う書き下ろし長編。 内容を深く考えないまま、この作者の作品だからと読み始める。 読み始めて間もなく、どうも『エンブリオ』の続編らしいことに気付く。 そういえば、この人の生殖とか移植とかいった内容の本は、読んでいて辛いので、『エンブリオ』も読むのを避けていたんだった。 しかし、読み始めると、途中でやめると先が気になって仕方がないのと、後味が悪いのとが半々。ラストが悲惨な結末にはならないだろうという妙な確信があったので、とにかく最後まで読みきってしまう。 『エンブリオ』では、サンビーチ病院の岸川卓也院長がどのように描かれていたのか?・・・最後まで読むと想像がつくようで、もっとはっきり知りたいようで・・・結局、この後に『エンブリオ』を読んでしまうかも。 タイトルでもあるインターセックスについては、何も知らなかったので、驚かされる記述が多い。どこまでが事実に基づいているのかはわからないけれど、インターセックスの新生児が意外に多いのにもびっくり。 ただ、主人公の秋野翔子先生が、医者としても、人としても、出来過ぎた女性で、読んでいて少ししんどい。それに反して、岸川院長が、悪と善でゆれるので、人物像がうまくとらえられなくて落ち着かなかった。 秋野先生と岸川院長との最後の対決・・・最後にはこの事実が明かされるだろうと、かなり早い段階から予測はついたのだけど、「こういう形になるか?」と、なんともしっくりこなかった。 《2008.11.18読了》《2008.11.19記》 |