• 浅田 次郎 『中原の虹 3巻・4巻』

読み終わって、この作者は律儀な人なんだなあ、という印象。

『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』、『中原の虹』と読み進めてきて、この一連の物語の最初から登場し、西太后に仕える大総管大監にまでのぼりつめる李 春雲(春児)、その妹で梁文秀とともに日本へ亡命することになる妹の玲玲。そして、浪人市場で張作霖に買われ、馬賊の頭目として活躍する兄の李 春雷(雷哥)。「極貧の中で生き別れた」この三人の兄弟が、何らかの形で再会し、物語が締めくくられるんだろうと予想していたんだけど、それだけではなかった。

これまで登場した主要人物が次々と出てきて、それぞれの物語が締めくくられていく。

正直、『中原の虹』はかなり読みづらかった。

張作霖は雨亭、袁世凱は慰庭。文中では姓名、会話の中では字(あざな)。しかも、チャン ヅォリン、ユティン、ユアン シイカイ、ウエイティン・・・と小さい小さい字で、中国語読みのルビがつく。しかも、張作霖には、白虎張(パイフーチャン)だの総攬把(ツオランパ)だの東北王(トンペイワン)だのという呼び名まである。登場人物が多いのに、いちいちこれなので、読みにくくて仕方がない。

しかも、視点がしょっちゅう変るので・・・と書きかけたところで、前の『中原の虹 1巻・2巻』の覚え書きを読み返してみると、同じことを書いている。

1巻・2巻以上に登場人物が増えて、視点がころころ。その中に、ものすごく惹かれる人物がいたらまた違ったんだろうけど、それが・・・。宋教仁(ソンジアオレン)が気になる存在になりはじめたのに、あっさり消えてしまったし・・・。

せっかく『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』と読み進めてきたのに、『中原の虹』にのめりこめなかった敗因は、まずは、途切れ途切れに読んでしまったこと。一気に最後まで行けば、また違った感想になったと思う。

それでも最後まで読んだのは、この小説の持つ雰囲気が嫌いではなかったこと。そして、描き方の好き嫌いはともかく、それぞれの人物が丁寧に描かれていて、最後まで読んでみると、決定的な悪者はいない。

この物語のキーワードは、それを持つものが天下を取るという天命の具体である「龍玉」、そして、「没法子(メイファーヅ)」と、「わが勲(いさおし)は民の平安」と、「越過長城(ユエグオチャンチョン)」といったあたりか。

これでようやく読了。この時代のことをほんの少し知ることができたので、次は、少し後の時代になる 船戸 与一の『満州国演義』を読む予定。

《2008.2.28読了》


本の覚え書き/読了本


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Last-modified: 2008-02-29 (金) 11:15:33 (5901d)