• 宮本 輝 『ひとたびはポプラに臥す』

文庫本で全6巻。

作者は、27歳の時に、鳩摩羅什という人物のことを知り、いつの日か、鳩摩羅什が歩いた道を自分も歩こうと決心する。

約20年が過ぎ、鳩摩羅什が辿ったシルクロードの地を、40日間をかけて旅をする。中国・西安からパキスタンのイスラマバードまで、6700キロの酷暑と砂漠の旅。

日本を発ったのが1995年5月25日で、帰国したのが7月1日。

読み始めたのがいつだったか?・・・3ヶ月前か、半年前か?

おもしろくないわけではないんだけど、紀行文なので、先が気になって仕方がないような内容でもない。分厚くもない文庫本なので、電車で移動する時などに持ち出して、ちょろちょろちょろちょろ読み進む。

ちょうど半分ぐらい読んだ成人式の頃に、「新成人に薦めたい本」として、近くの図書館に展示されていた。「そう?私なら薦めないけど・・・読み終わったら薦めたくなるのか?」と、本を貸してくれた友人に聞いてみると、「おじさんの繰言だよね。新成人に薦めるかなあ?」という反応。

読み終わってみると、「おじさんが人生の折り返し地点に差し掛かり、旅を続ける中で、自分のこれまでの生き方について振り返る本」と言えなくもない。これが、若者に薦めたかった理由なのかどうなのか???

個人的におもしろかったのは、作者が旅をしたほぼ同じ時期に自分も中国に行ったことがあったこと。その時に訪れた地点でダブっているのは蘭州だけなんだけど、「そこまで空気が汚れていたか?」と思うとともに、黄土色というかなんというか、日本の川とはかなり印象の違う黄河の水の色と川幅を思い出す。それと、都会とはかけ離れたホテルに泊まると、ものすごい安宿でもなかったはずなのに、枕にもシーツにも誰のだかわからない髪の毛がべたっとついていたこと。

そのほか、細々としたことで「ああ、そんなことがあったよ」と思い当たることもあった反面、「そこまで食べ物と水に気をつけないとお腹の調子が悪くなるか??」と思ったり・・・。

隣国で、肌の色も顔形もそんなに変らない人たちが暮らしているのに、あまりにも違う面を見せつけられて、どういうわけか自分のことを見つめなおさせられる国なのかも・・・とこの本を読みながら思ってしまった。

《2009.4.17読了》《2008.4.21記》


本の覚え書き/読了本


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Last-modified: 2009-04-21 (火) 22:57:55 (5483d)