• 宮部 みゆき 『名もなき毒』
  あらゆる場所に「毒」は潜む-。
  財閥企業で社内報を編集する杉村三郎が、私立探偵・北見を訪れて出会ったのは、
  連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生だった。現代ミステリー。 

「あらゆる場所に『毒』は潜む」・・・そうか、そういうことがいいたい本だったのか!?

読み終わってから、本の宣伝文句を読んで、ちょっと違和感を持ちながらも、そうかもしれないなとも思う。

コンビニで売られていた紙パックのお茶に毒が入れられていて、それを飲んだ男性が亡くなる ―― という冒頭の描写。イメージが目に浮かぶようで、とっつきはよかったのだ。

そして、今回は、財閥企業で社内報を編集する杉村三郎という男性の視点で話が進む。少し前に『楽園』を読んで、登場する女性陣に、なんともしっくりこない思いを抱いたので、「やっぱり男性視点の方が読みやすいなあ」・・・そして、「別に選んでいるつもりはないんだけど、最近読んでいる本は、男性の視点で書かれている本が圧倒的に多いよなあ」と本筋とは関係のないことを考えながら読み進む。

だから余計なのか、今回も、女性陣にしっくりこないものを感じた。まず、財閥の会長の娘である杉村の妻。そして、同じ職場で働く社内報の女性編集長。冒頭の毒入りのお茶を飲んで祖父を亡くした女子高生とその母親。

この本でキーマンとなるのは、突然仕事に来なくなった杉村の女性アシスタントで、トラブルメーカーの原田いずみ。この人には共感したくはないし、こんな人には係わり合いになりたくないんだけど、逆に、この人の方が、「こんな人いそうだよぉ」とリアリティがあった気がする。

ネットの書評を読んでいると、『誰か』の続編的位置づけならしい。確かに、それらしい事件のことが何度もほのめかされはするんだけど、『楽園』ほどは、前作を読んでおけばよかったと後悔する内容ではなかった。

毒物混入だけじゃなくて、シックハウス症候群や土壌汚染、そして、人の持つ毒・・・切り口としてはおもしろいし、いろんな意味で、理不尽さを感じさせられる内容だった。

《2008.5.28読了》
《2008.6.4記》


本の覚え書き/読了本


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Last-modified: 2008-06-04 (水) 21:42:59 (5804d)