読み始めてすぐに、懐かしい場所に戻ってきたような感じを覚えて、「主人公の須貝彰(あきら)は二度目のパリ留学ということだけど、一度目の留学の時の話も小説になっていたっけ?」と、かなり以前に書かれたフランスを舞台にした本の内容を調べたほど。今、この本が手元にないのではっきりはしないのだけど、『白い夏の墓標』を思い出させるものがあったのかも。 ネットで調べてみると、 カタリ派の研究をしている歴史学者の須貝は、フランス南部のトゥルーズ市立図書館で、ドミニコ会修道士レイモン・マルティンが一三一六年に書いたと思われる手稿を見つける。そこには、カタリ派の信者達が、生きたまま焼かれたということが記されていて・・・。 この手稿を元に、第二、第三の手稿を探す旅がはじまり、殺人事件が起こり・・・ミステリーじゃなくても十分に読み応えがある内容。そして、ミステリーとしてはラストに捻りがないので、「この結末じゃおもしろくない」と、ミステリーとして読んだ人に思われるのは残念な気がする。 手稿の文体は、「古文書風な文体」を意識されているようで、センテンスが長い。カタリ派の信者達の人となりや処刑の場面を伝える部分は、情景が思い浮かぶようなせつせつとした感じ。 ただ、ヴァチカンから派遣された審問官が行う異端審問。カタリ派の聖職者が聖書の言葉を抜粋しながら、宗教論争を挑もうとするのだけど、正直、聖書に関する知識がまるでないので、ここの部分は眠くなってしまった。ごめんなさい。 しかし、『ダ・ヴィンチ・コード』、『天使と悪魔 』、この本と読むと、ヴァチカンに対してかなり偏った見方になりそう。別の視点から書かれた本も読まなきゃならないような気がしてきた。 |