• 桜庭一樹 『赤朽葉家の伝説』

終戦後、「辺境の人」に置き忘れられた幼子。この子は村の若夫婦に引き取られ、長じて製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれ輿入れし、「赤朽葉家の千里眼奥様」と呼ばれるようになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。――千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし。高度経済成長、バブル景気を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く製鉄一族の姿を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編!


「最後の神話の時代 1953年〜1975年 赤朽葉万葉」、「巨と虚の時代 1979年〜1998年 赤朽葉毛毬」、「殺人者 2000年〜未来 赤朽葉瞳子」の三部構成。二段組300ページを超える結構なボリューム。

鳥取県西部の紅緑村(べにみどりむら)の赤朽葉(あかくちば)家。

万葉は、民俗学者がサンカ、ノブセ、サンガイとか名づけた、中国山脈の奥に隠れ住む「山の人」の子供。彼らは、村で若い不慮の死者(自殺者)が出ると、どこからともなく村にやってきて、葬ってくれる・・・一部は、だんだんの世界である紅緑村、万葉の未来視、嫁いでからは赤朽葉家のお屋敷、職工が花形職業であった頃の製鉄業等々、独特の世界観に浸れて一気に読めた。

ただ、二部は途中でだれた。「町で噂の不良少女となり、そののちレディースを描く少女漫画家となって一世を風靡」する毛毬の成長が、当時の出来事とともに描き込まれている。毛毬や親友のチョーコをはじめ、登場人物は際立っていていいのに、この事細かに描かれている当時の出来事がくどい。

三部はミステリー調な展開?・・・と思いきや・・・。

結末が、正直、がっかりだった。瞳子が探偵役を務め、万葉と毛毬から話に聞いていた過去の出来事を探っていくんだけど、「多分、キーマンは○○だね」というのがかなり早い段階でわかるので、ミステリーとしてはおもしろくない。

そして、ラストを読むと、「ああ、この小説は、10代か20代はじめの若い層向けなのか?」と思わされてしまって、一部から思い描いてきたイメージが、なんともしっくりこないまま突然断ち切られた感じがする。

細かな部分はともかく、全体的な設定は好きなので、三部がもう少し違う展開ならもっと深みのある小説になっただろうにと残念(>えらくえらそうな感想かも)。



トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2007-07-20 (金) 21:35:37 (6124d)