• 浅田次郎 『中原の虹 1巻・2巻』

「鬼でも仏でもねえ。俺様は、張作霖だ」

『蒼穹の昴』の最終巻で描かれた、戊戌の政変から10年。今回は張作霖が主役か?

正直、期待はずれ、というより、期待しすぎていたのかも。

天命の具体である「龍玉」、白太太(パイタイタイ)の占いの描写は、『蒼穹の昴』でも何度も出てきて、この小説の軸ともいえるもの。

しかし、『蒼穹の昴』では、文秀、春児、西太后慈禧、李鴻章と強烈な個性と魅力を持つ人物が次々と登場して、「龍玉」も占いも、話の展開を助けるものぐらいの比重でしか読んでいなかった。

ところが、今回は、いきなり張作霖が「龍玉」を取りに行く。白太太も都合よく登場。張作霖と、もう一人の主要人物である李春雷と出会う。

しょっぱなのその展開にのめりこめなくて、張作霖にもそれほど人間的魅力を感じられないまま話が進む。そして、張作霖率いる馬賊たち、日本人の将校、さらにはヌルハチをはじめとする清朝の基礎を創ったご先祖様たちが次々と登場。視点が次々と変るので、さらにのめりこめないまま話が進む。前作で、自己中心的で嫌なやつというイメージを作りあげていた袁世凱が、少し異なった側面を描かれているのも、どうにも違和感が・・・。

西太后慈禧、光緒帝、春児が登場し出したあたりで、ようやく話しにのってきたという感じ。2巻ではついに「龍が逝く」。さて、その後の展開は・・・と盛り上がってきたところで、図書館で予約している3巻が手元に届くのはかなり先になりそうな気配。4巻はまだ未刊だし。

それまでに、『風の払暁』の続編『事変の夜』が先に届きそうなので、またもやのめりこみにくくなるのかも。

どうも『風の払暁』の馬賊たちのインパクトが強くて、頭の切り替えができないままこっちを読み出したのがいけなかった気がする。



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Last-modified: 2007-06-15 (金) 19:30:27 (6158d)