• 浅田 次郎 『珍妃の井戸』

『蒼穹の昴』の番外編のような作品。

 列強諸国に蹂躙され荒廃した清朝最末期の北京。
 その混乱のさなか、紫禁城の奥深くでひとりの妃が無残に命を奪われた。
 皇帝の寵愛を一身に受けた美しい妃は、何故、誰に殺されたのか?

この美しい妃というのが珍妃(ちんぴ)で、西太后慈禧の甥になる光緒帝の妃。

「われわれは立憲君主制の藩屏たる貴族として、真犯人を探し出さねばなりません。」と集まったのが、大英帝国の海軍提督エドモント・ソールズベリー、ドイツ帝国の大佐ヘルベルト・フォン・シュミット、ロシアの露清銀行総裁セルゲイ・ペトロヴィッッチ、日本の東京帝国大学教授松平忠永子爵の4人。

「なんで、いきなりそういうことになるんだ?」という奇妙な4人組。

ニューヨーク・タイムズ駐在員 トーマス・E・バートン氏の証言
元御前太監 蘭琴氏の証言
袁世凱将軍の証言
珍妃の姉で光緒帝側室 瑾妃殿下の証言
首領太監 劉蓮焦氏の証言
廃太子 愛新覚羅溥儁氏の証言

で構成されていて、それぞれの証言がまるで矛盾している。

さて、この内容でラストはどうまとめられるのか?・・・不安になりながら読み進むと、「そうか、そうきたか」という感じかな。まあ、意外な真犯人が提示される謎解きものでもないので、無難な終わり方かもね。

『蒼穹の昴』を読み終わった直後だったので、登場人物たちのエピソードとしても楽しめた。作者の思い入れが強いのか、今回もミセス・チャンが大活躍なのがおかしい。

それと1898年に起こった義和団事件のことについて、それぞれの証言者によって、いろんな角度から言及されている。この事件と列強諸外国との関係がよく理解できていなかったので、どこまで史実に基づくのかはわからないけれど、興味深かった。



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Last-modified: 2007-05-10 (木) 20:40:08 (6190d)