• 小野 不由美 『風の万里 黎明の空(上)(下)』

「十二国記」もの。

「慶国に、玉座に就きながらも、王たる己に逡巡し、忸怩たる思いに苦悩する陽子」

「芳国に、王と王后である父母を目前で殺され、公主の位を剥奪されて哭く祥瓊(しょうけい)」

「才国に、蓬莱で親に捨てられ、虚海に落ちたところを拾われて後、仙のもとで苦業を強いられ、蔑まれて涙する鈴」

前半は、別々の国にいる三人の少女が、同時進行で順に描かれているのと、途中に『魔性の子』『蒼穹の昴』を読んだので、頭の中が混乱。のめりこめなかったんだけど、三人が関わっていく上巻の終わりの方からは、一気に読む。

『月の影 影の海』の頃よりも、陽子がたくましくなっている。セリフも少なくて、くどくないのがいい。

あとの二人は、心情が事細かに描かれ過ぎている気がして、「この文庫が同年代の少女向けに書かれているから?」と思わないでも・・・。

重税と苦役を強いる官吏の圧政から民を救おうと、立ち上がる人々・・・虎嘯(こしょう)、夕暉(せっき)、桓魋(かんたい)、柴望(さいぼう)たちが、よく描かれていて、一人一人のキャラが立っているのがいい。相変わらず、人が次々と死んでいくのに、あんまり暗くならずに読み終えられるのは、さすがだ。

しかし、上の名前を変換するだけでも大変。今回は、さらに、ややこしい漢字に本来の読みとは違うルビを振られているところが多くて、作者の苦労がしのばれる。読んでいて引っかかるところがなくはなかったんだけど、独特の世界を作ろうとされている細かなこだわりは好きだな。



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Last-modified: 2007-04-26 (木) 19:41:56 (6210d)