• 浅田次郎 『蒼穹の昴』

文庫本で4巻。2巻を読み終わってから約1ヶ月。ようやく全巻読了。

中国清朝末期、科挙の状元として政治の中枢へと進んだ文秀(ウェンシウ)。貧しさから逃れようと自ら宦官となり、西太后慈禧に仕えることとなる春児(チュンル)。

この二人を軸として話が進んでいくのかと思いきや、中盤、二人の登場頻度がやや少なくなる。終盤には再び物語の重要な役割を果たすんだけど、全体を通して、この二人よりも強烈なインパクトがあったのが、李鴻章と西太后慈禧。特に李鴻章は、外交的手腕を諸外国から高く評価され、「ジェネラル・リー」として一目も二目置かれる傑物として描かれている。西太后慈禧も、日本では則天武后とともに悪女のイメージが強いけれど、この小説では、骨身を削って清国につくす、強くたくましい女性として描かれている。

そして、日本人記者の岡とともに活躍する、ニューヨーク・タイムズの記者のトーマス・バートン。その秘書であり恋人であるミセス・チャン。このミセス・チャンは、終盤、八面六臂の大活躍。 最初に登場したときは醜女であった気がするのに、なぜか途中から謎の美女に。このチャンの登場で話がおもしろくなっているとは思うんだけど、どうも007のような雰囲気にも。なんかこの人だけ異質だ。

「破天荒な小説」と解説で陳 舜臣さんが書かれていて、「そうだよね、そういう感じだよね」と読み出したら、「破天荒」というのは厳しい科挙制度から生まれた科挙用語だそう。奥の深い解説。この時代のことが系統立って頭に入っていないので、この方の歴史解説書を読みたくなった。しかし、読もうと思っている本がたまっているので、いつのことになるやら・・・。



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Last-modified: 2007-04-19 (木) 19:52:26 (6210d)