• 帚木 蓬生著 『受命―Calling』

ミサイル発射で注目されている国を舞台にした小説。

前作を出版された頃に、作者がテレビに出られていて、この小説を執筆中であることと、「殺されてもいいです」と涼しい顔をしておっしゃっていたので、出版されたら買って読もうと思っていたのだ。

招聘医師として平壌産院に勤務する日系ブラジル人医師、津村リカルド民男。万景峰号で海峡を渡った舞子。中朝国境から潜入した韓国人の寛順と東源。「彼らの運命が交錯するとき、現代史を塗り替える大事件が勃発する。」

津村と舞子と寛順は、『受精』の登場人物。個人的にはこの話はあまり好きではなかったので、作者がこの3人を再び登場させたのは意外だった。「3人の精神的な結びつきの強さを感じさせるため?」と思いながら読み進むにつれて、「ああ、こういうところで関連させたかったのか」と納得。本の帯には、『受精』の続編というようなことは書かれていない。この本と『受精』のテーマは全く別ものだし、好む読者層が別というのは織り込み済み?

この国については、ニュースとワイドショーネタを聞きかじっているぐらい。どこまでが事実に基づいているのかはわからないけど、近隣諸国がこの国とどう付き合おうとしているのか、現指導者の人となり、前指導者から現指導者に代わり国がどう変ってきたのかなど、この国の状況が詳しく書かれていて、まとまった知識を得たことすらなかったので興味深かった。

そして、登場する人や場所がこと細かく描写されているのがこの人の本の特徴。特に平壌の街中の情景が何度も詳しく描かれていて、読み終わって「平壌ツアー」から帰って来たような気になった。この本のような事件が本当に起これば、いつか気軽に行ける日がやってくるのか・・・。

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Last-modified: 2006-07-22 (土) 18:28:22 (6482d)