• 桐野 夏生著『水の眠り 灰の夢』

「きりの なつき」だと思っていたら、「なつお」だった。この人の作品を読むのはこれがはじめて。一度読んでみたいと思っていたので、105円の古本を見かけて、いつごろの作品なのか、何作目なのかよくわからないまま購入。解説を読んではじめて、女性探偵・村野ミロのシリーズがあって、その父である村野善三が「トップ屋」だった若かりし日のことを書かれた番外編のような作品だと知った。

昭和38年9月、地下鉄爆破に遭遇した週刊誌記者・村野は連続爆弾魔・草加次郎事件を取材するうちに、一人の女子高生の殺人事件の容疑者に。

時代設定が、東京オリンピック前夜の高度成長期。30年代の雰囲気がうまく描かれていて、一昔前の小説を読んでいるような気にさせられた。「トップ屋」と呼ばれた、週刊誌の「トップ記事を作る傭兵」たちの内情が描かれているのもおもしろかった。

女子高生の殺人事件が核にあって、紆余曲折しながらも真相が解明される。でも、そのことよりも、傭兵軍団の団長・遠山や村野の親友の後藤、後藤の恋人・早重など、次々に登場するあくの強い人物が繰り広げる人間模様が興味深くて、どういう結末を迎えるのかが気になって、一気に読んでしまった。

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Last-modified: 2005-08-23 (火) 19:06:58 (6820d)