• アンドレイ・クルコフ著『ペンギンの憂鬱』
ペンギンの憂鬱

新聞広告を見た時から、タイトルに妙に惹かれるものがあったのだ。表紙のペンギンも可愛い。

舞台はソ連解体後の新生国家ウクライナの首都キエフ。「キエフといえば、京都にあるロシア料理のお店に行ったことがあるなあ」というぐらいのイメージしかない。「ウクライナでは、ペンギンを飼うのは珍しくないのか?」とすら思っていたのだ。

どんな所なのかが描かれているのかと、興味津々で読み出した。主人公ヴィクトルは売れない短篇小説家。動物たちにエサもろくにやれなくなった動物園から譲り受けたペンギンと一緒に暮らしている。まだ生きている政治家や財界人や軍人たちの「追悼記事」をあらかじめ書いておく仕事を始めてから、妙な状況に追い込まれていく。

深読みすれば、危うい国内事情が浮かび上がるんだろうけど、表面的にはヴィクトルの生活が淡々と描かれている。「夜中にペンギンが廊下をペタペタと歩くのか」、「バスタブの水の音を聞いてやって来るんだな」と、「ペンギンと暮らしてみたいなあ」とのんきなことを考え、ヴィクトルと自分を重ね合わせるように読んでいたのだ。それが、途中からヴィクトルの行動に違和感が出てきた。

どういう終わり方をするのか最後まで予測できなかったんだけど、読み終わっても何となくしっくりしない。でも、そんな不思議な世界に浸れるおもしろい小説だった。

役者あとがきによると、カメレオンが登場する小説も書いているらしい。タイトルはわからない。日本語訳されていたら読みたいな。

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Last-modified: 2005-03-16 (水) 20:20:23 (6981d)