かつて子どもだったあなたと少年少女のために刊行された“ミステリーランド”の1冊。 三部構成。第1部が「子どもは昨日のことを語る 母の生と死、そしてほかのことも」、第2部が「男たちはそれぞれ過ぎた日の記憶をたどる その女の生と死、そしてほかのことを」、第3部が「少女はなにも覚えていないまま 見知らぬ男に導かれて廃屋へと足を踏み入れる」。 洋館の密室で死んだ美しい女性。関係者の証言で、魔女と呼ばれた女性や先祖から棲み続ける立派な洋館、しだれ桜のある庭のイメージが浮かびあがり、事件の真相が明かされていく。挿絵にも影響されて、頭の中で少しずつイメージが結ばれていくような作品。 この人の本は建築探偵シリーズしか読んだことがなかったのだけど、密室についての謎解きは建物好きのこの人らしい。最後まで名前を明かされない探偵役は、ひょっとするとこのシリーズに登場する彼かも・・・。 あとがきにあたる「わたしが子どもだったころ」が、子ども達が読むことを念頭において書かれた文章で心に残った。 #comment |