• 帚木蓬生著『アフリカの瞳』

『アフリカの蹄』の続編。前作は、若き日本人医師・作田信が、絶滅したはずの天然痘を使って黒人社会を滅亡させようとする白人支配層に立ち向かうという内容。

その12年後を描いたのがこの作品。研修のためにアフリカに来たシンも、天然痘騒ぎのときに親しくなった黒人女性パメラと結婚し、長男タケシも生まれ、この国に骨を埋める覚悟だ。

「いまわれわれに生命の重さを問う衝撃作。
国民の10人に1人がHIVに感染。毎日200人の赤ん坊が、HIVに感染したまま生まれてくる国。ここではエイズという絶望すら、白人資本に狙われる。
著者渾身の書下ろし長編小説!」

「世界のHIV感染者6500万人、その3分の2がアフリカに集中するエイズの現実を真っ向から見据え、それでも希望を求め続ける日本人医師の闘いを描いた、衝撃と感動の長編小説。」

といった内容。前作は対白人支配層だったのが、今回は対エイズ、対政府、対白人資本の製薬会社という感じかな。エイズの問題や、エイズ薬の問題、製薬会社の治験など、考えさせられることは多かった。シンを取り巻く人々も活き活きと描かれていて、読み応えのある作品ではあった。

でも、この人の作品を何作も読んでいる私としては、全体的に少し物足りない印象を受けた。シンがエイズ学会のアフリカ部会で演説するシーンや、シンとパメラが建てた「カヤ・ニール」で練習が行われる黒人達の生活を題材にした舞台など、ドラマ化すれば見せ場が多くていいかもしれない。

前作がNHKでドラマ化された時は、作田信役が大沢たかおで、「続編を読みながら、大沢たかおの顔が浮かんだらいやだな」と心配していたんだけど、あまりにもイメージが違いすぎたからか、影響がなくてよかった。

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Last-modified: 2004-10-10 (日) 09:56:21 (7130d)