• 宮部みゆき著『ICO イコ 霧の城』

PS2のゲーム『ICO』を元に、その物語世界をノベライズした作品。

ベスト版が発売されたときに店頭で見かけて、ケースを手に取って見たら、宮部みゆきの推薦のことばが載っていた。ちょうど『理由』を読み終わった直後だったので、つい勢いで買ってしまったのだ。まさか、ノベライズまでされるほど入れ込まれているとは思わなかった。しかも、ネットで書評を読んでいると、かなりのゲーマーだということがわかった。

私がこのゲームを大好きになったかというと、そうでもなかったのだ。霧の中にそびえる廃墟のような巨大なお城が舞台。抑えた色調で、くどくどしい説明もなく、想像もふくらむし、独特の雰囲気が醸し出されたいいゲームだとは思う。でも、言葉も通じない少女と、ずっと手を繋いでいないといけないというのが、ひたすら面倒だった。

主人公のICO(プレーヤー)は、生け贄として城に捧げられた頭に角の生えた少年。偶然の地震で束縛を逃れ、巨大な鳥かごのようなものに囚われていた謎の少女と出会い、少女を連れ去る敵をかわしながら城からの脱出を図るという設定。手を繋いで少女を連れていないと、敵に襲われたり、いなくなったりする。「もう、勝手について来てよ!」、「それぐらいの敵、自分で倒せ!」、「これぐらいの段差がなんで登れへんのさ!」と、かなりいらいらがたまる。 確かに、少女が一緒にいないと先に進めないところが多いんだけど、「美しい少女を助けてあげたい!」という騎士道精神のない私には、ただただ鬱陶しかったのだ。

小説を読み始めると、大分前にやったゲームの場面が浮かぶ。ICOがどう育てられたかや、なぜ生け贄になったのか、少女(ヨルダ)の過去、霧の城の歴史、少女と母親である霧の城の女王との関係など、ゲームでは詳しくわからないことが丁寧に描かれている。「へぇ、そういうことだったの」と思いながら読んでしまった。でも、あとがきを読むと、小説として自由に内容をふくらまされたそうで、ゲームの展開や世界設定をそのままノベライズされたわけではないらしい。

このゲームの大ファンの方や、ゲームをやらずに読まれた方はどういう感想を持つんだろう?私は、こんな風に内容をふくらまされたのかとおもしろかったし、忘れかけている城の内部の様子をもう一度見て、ここでこういうことが起こったのかと小説の内容と重ね合わせてみたくなった。この小説を読まなかったら二度とやらなかった気もするんだけど、ここで描かれているICOと少女の感情を思い浮かべながら、以前とは違う視点でやってみたら、手を繋ぐわずらわしさが少しはましになるかもしれない・・・。

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Last-modified: 2004-09-03 (金) 20:09:26 (7173d)